十月十日、がーんと夜闇にひびく鐘の音。ぬうっとばかりにあらわれる牛。牛に乗った真っ白の仮面 のまだら神。赤鬼や青鬼とともに高張提灯(たかはりちょうちん)の明かりに照らされて、この広隆寺の内外を練り歩きます。牛祭の始まりとなります。寺内に戻ったまだら神は、金堂前の祭壇で、巻き物をひろげ、ゆっくりゆっくり祭文(さいもん)を読み上げます。これが長い。奇妙な声「からめ牛に荷鞍(にくら)を置き…云々」と語尾をきゅうーんと上げる語り口で延々つづきます。夜は更けて秋の冷気がただよいますがまだ祭文はつづきます。そうしてある瞬間、まだら神はだだっと壇を下り金堂に飛び込みたーんと戸を閉めて、祭はおしまい。奇祭も奇祭です。広隆寺は推古11年(603年)に聖徳太子が建立したわが国最古のお寺と伝えられます。このけったいな祭は、長和元年(1012年)に恵心僧都(えしんそうず)が夢のお告げを受けて始まったといわれています。牛さんの都合やいろいろの事情で毎年、祭が行なわれるとは限らないので、あらかじめ確かめて行くのが賢明です。
◆営業時間 参拝9時〜17時(12月〜2月は〜16時30分)
◆参拝料 700円(小中生400円高校500円30名以上50円引)
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